こんにちは。ゆきみです。地学系の大学院生です。
今日は、ラボの研究をサポートしてくれるテクニシャンさんの話です。
日本ではテクニシャンさんがいる研究施設は恵まれた感がありますよね。地方大から最先端ラボまでひととおりは滞在したことがあるので、物資だけでなく人材の財産というものがどんなに重みのあるものかはとても実感するところです。
マンパワーだけではなくて、PDや学生に足りない専門性を補ったり、教員がしきれない細やかな部分でのPDや学生の教育など、さまざまなよい面があります。あとこれは勝手な想像なんですけど、先生も年が離れたPD&学生と1on1だけより、身の回りに年が近い社会人さんがいたほうが、仕事に弾みがつくのではないでしょうか。
学生目線で言えば、教員&学生というある意味縦社会で成り立つ空間に、テクニシャンさんがいるだけでとっても空気が違います!!!とくに学会前、修論博論中間審査前などなどピリピリするシーズンのときのありがたさったら!(力説)
修士号や博士号持ちのテクニシャンさんは学生にとって教員やPDさんとは異なり専門性を極めた職人として頼りになりますし、アカデミックの道を先に経験してきた良き人生の先輩です。逆にアカデミックを背景にしていないテクニシャンさんは、企業のラボor企業の研究ではない職業がご出身の社会人経験者なわけで、アカデミックが背景のテクニシャンさんとはちがった教訓や常識観を与えてくれる存在です。
ということで、テクニシャンさんというのは、研究でも人の成長でも、先生も学生にもありがたい存在だと思うのです。(ゆきみ個人観)
ドイツのラボにもテクニシャンさんがいます。
日本のテクニシャンさんのように理学の学位を持っている方もいれば、理学の学位ではないが工学の学位だったり、あるいはまったく違う分野だが関連する企業のラボでの社会人経験を持っていらっしゃるなど、背景はいろいろです。複数業務を請け負うことが普通のようですが、中には特定の装置専門のマイスター的存在の方もいます。(お給料のシステムについては私は存じませんが、勤続年数でもグレードがつくとちらっと聞きました)
勤務体制は人によりさまざま。
朝10時出勤!午後2時退勤!というあるテクニシャンさんは昼休憩はコーヒー1杯で、勤務中は熱心にマシンと格闘しています。ボス経由で他の大学の依頼分析があるときは締め切りがあって忙しそうなので、そういう邪魔してはいけない時を除けば、かなり親切に学生に時間を使ってくれます(優しすぎる...!)。
また別のテクニシャンさんは、朝8時半には居室でコーヒーを淹れていて(ボスより早い)、午後1時までは学生を受け付けるがそれ以降の退勤16時までは自分の時間とし、ラボ環境のさらなる最適化やマシンメンテのために他者と関わらない時間を設けています(でかいヘッドホンで外界をシャットアウトしている)。
どのテクニシャンさんも、自分たち学生と会話するときと、PDさんと接するときと、秘書さんやボスと接するときとで対応が違うので、ちょっとした会話を耳に挟むのも英語の勉強になります(ドイツ人同士だとドイツ語でまったくわかりません)。英語には敬語がないと言いますが、上下関係をふまえた言い回しはあります。そうやって丁寧に言い回すのか、PDさんには厳し目だな、などと思いながら研磨してたりします。
また、わからないことがあれば勇気を出して話しかけてみるべしです。職人気質のこわそうな人でも、質問すればパッション全開でマシンをあけて解説してくださることもあります。
例えば実験関係の作業でちょっとうまくいかないことがあって、そこで2時間3時間とひとりで試行錯誤(格闘)してみてもいいですが、テクニシャンさんに話しかけることでスキルを教わったり相談していっしょに悩んだりすれば、会話の中で知識を増やすことができたり技術面でも成長したりすることができます。
ということで、私はテクニシャンさんの勤務日は積極的に実験室に行くようにしています。
夕方になるとお子さんが迎えにきたりもして、ラボにひょっこり顔を出した子に「パパどこか知ってる?」と聞かれると、ほんっとに胸きゅんです。かわいいのなんの。あるときは、「ごめん、どこにいるかわかんないや...居室かな?」と自信なさげに答えたところ「そっかー。ありがとう行ってみるねー、チュス!」とまたたくまに走っていなくなってしまいました。そのあとパパ(テクニシャンさん)が子供をつれて挨拶して帰っていくとき、子供が大きな声でダンケシェン!!と恥ずかしそうに言っていたのもまたかわいく。愛情たっぷりに育てられてるんだな...私にたずねたのに結局居場所よくわからなかったのにちゃんとお礼言えてえらいこだな...と頭の中で思いながらその後の研磨を続けたのを覚えています。
テクニシャンという職業も、好きなこと(高い専門性)を職業に、育児と仕事を両立している1つの魅力的な生き方だなあと感じます。ある意味マルチプルな能力を求められる研究者と、1つを極めたテクニシャン、どちらもサイエンスの発展に不可欠な人材ですね。将来のラボ運営の想像すらまだできないのですが、両方を育てられるラボがつくれたらとってもすてきだなと思います。私がいつか自分で科研費をとってラボを立ちあげて運営するようになったら、学生、PD、テクニシャン、さまざまな経験と年齢が混ざったいい雰囲気のラボを、互いに元気を出し合い成長し合えるラボを作りたいと思っています。いいラボ作りのためにも、まだまだもっとたくさん経験を積みたい。
ところで、テクニシャンさんはバケーションもとるので、分析スケジュールを立てるときは注意します。ときには1ヶ月いなかったりして、それを1週間前に知ることになります(!!!)。ラボのPDや学生でマシンをコントロールすることが許されているならいいですが、テクニシャンさんかボスしか動かしてはならない装置である場合、データがもれなく1ヶ月遅れることになるので用心です。
もし留学先のラボにそうなる可能性のある、専門性の高い装置がある場合は、誰が管理していて・バケーションシーズンはどういった回しかたになっているのか、念の為確認しておくといいです。
これを書いている今、まさに装置の1つがバケーションのためストップしています。ちょうど共同研究の外部のサンプルははけたけど、学生のサンプルははけませんでした。バケーションに行った親子楽しんでるかな、と思いつつ、帰ってきたらすぐ分析してもらえるようにサンプルを用意している今日このごろです。
では、今日はここまで。
(いらすとやさん、ビルの窓掃除職人)研究は共同作業だ。ほんとに。
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