ドイツのラボのあれこれ

こんにちは。ゆきみです。


ドイツは突然夏が終わって、すっかり寒い秋になりました。30℃くらいの気温で汗かきながら、論文の締め切り間近の同僚同士で屋外で卓球してたのに、急に朝10℃切ったりするものだから、周りでは体調崩す人もいます。ドイツ人でも。


今回はドイツの大学院で研究してみたいなと思っている人のための情報、とくに地球惑星科学関連の人の情報が少ないなと思って、まずは箇条書きでいろいろ書いておこうと思います。


ちなみに私の日常作業は、サンプルの切断・研磨・機器分析が7割。ラボ滞在時間は現地学生より長めですが、慣れない異国での研究なので大事をとって、9時ー17時を自分で決めた勤務時間として守っています。(もっと遅く来て早く帰ることもある;体調による。朝晩はヨガをしたいので、そのために時間をとっておいているのもある。夜は家でPC作業をすることもある)



・まずラボで作業するためには、研究のための保険、ラボインシュランスが必須!これなしに大学で実験できないどころか、私の受け入れ先では実験室に入室できません。PDさんや秘書さんに聞けば、おすすめの保険を教えてくれるし、ネット完結で30分ほどで手続きができるものもある。私はこれを使いました(宣伝ではないです。条件もあるかもしれないし大学に要相談)

 https://www.laborversicherung.de/insurance-for-students/#top

 ↑2024年9月現在で1セメスター39.00€


・とにかく研究物資が潤沢。かゆいところに手が届くツールが多い。たとえば研磨1つとっても、いろいろな研磨台や補助キットがあります。(そして名前はドイツ語なので日本語でなんて言うのかわからない...語彙力...)


・夕方、夜間、休日の出勤は基本的にない。テクニシャンさんはバケーションに出かけることもあるし、計画的な分析を。(プライベートはプライベートとして大事にする人が多い。いいことです)


・超音波洗浄機などは、硬水の成分がこびりつく恐れがあるので、カルキ抜きされた水(demineraled water)を使うようにする。(そういうふうに書いてあることもあるし、書いてないこともある)


・作業や分析の記録をするノートがあるので、必ず日付と名前を書く。消耗品の項目もあれば、何をどれくらい使ったかも書く。


・ラボの居室にはエアコンがない。(分析機器の部屋にはある。そりゃそうね)


・窓に網戸がない。(窓側のデスクをあてがわれた場合、もれなくハチやら雨やら入ってくるので注意)


・ラボによるかもしれないけど、印刷が有料な場合もある。印刷は日本のほうが気楽だったかもしれない...必要なものは日本で印刷していくと楽。日本では論文を印刷して読んでいたけど、それが金銭的に&労力的に難しいので、こちらでは論文はPC、iPhone、iPadで読めるようにもしています。


・日本からサンプルを送ってくるときは注意が必要。(物品名と種目を検索して、EMSのラベルに正しく記載する。商業的な価値がないことを伝えるために、research purpose only、no commercial valueなど書き添える)大学で受け入れる先生かPDさんにも確実に知らせる。場合によっては税関で止められて日本に送り返されたり、受け入れ側が追加料金を支払っている可能性もあるので、さまざまな場合における対処を予め相談すべし!


・クリーンルームでやるべき作業は、自分が必要だと思ったら堂々と作業すべき。(価値観がさまざま。ラボインストラクションでカルチャーショックを受けても、自分を信じて、一番データの質が担保できる場所で作業しよう)


 (↑ たとえば私のケースなのですが、分析に使う粉試料を、日本ではクリーンルームで採取していました。でもこちらでは自転車を止める&人の出入りのある部屋でしなければいけない環境。私は人のいない時間にやったり、大事なもので作業道具ごと移動が可能ならばクリーンルームで作業しています。あと、日本だったら絶対手袋でやる作業を、こちらでは素手がいちばん綺麗という概念で、素手で行う人もいて、それを私にもおすすめしてきたりします。その価値観は否定せず、やんわり、その人がいない時間帯に手袋をきちんとはめて、道具もすべて洗浄して実験しています。それぞれの価値観は大切に、でも自分のデータのクオリティは自分で守りましょう)


 (↑ 補足。ドイツでは自転車は高価格な品物なので盗難が多い。なので、外にはもちろん自転車置き場があるのですが、自分の居室に自転車を持ち込んで鍵をかける人が多いです。このサンプリング部屋は自転車の持ち主のテクニシャンさんのお部屋でもあるので、自転車が出入りするのです...。クリーンルームは予約の必要はないのですが、分析機器でいっぱいなのであまり作業空間はありません...。日本のラボにいたころは、サンプリング道具がいつでも置いてあって空気が陽圧に調整されている便利で綺麗な環境で作業できていたので、本当に恵まれていたんだなあと思います)


・学内での盗難があったりもするので、ポシェットやらポーチで貴重品を持ち歩く。居室はこまめに鍵を閉める。ただトイレに行くだけの場合でも。(鍵を閉めていても、掃除の人も合鍵を持っているので入室可能です。なので、本当に大切なものはトイレだろうがどこだろうか肌身離さず持ち歩きましょう)



あと、これはラボにもよるかもしれませんが、私の受け入れ先ではスモールトークを大切にしています。朝のコーヒータイムの、おはよう(Guten Morgen or Hello)から始まるたわいない話。お昼のコーヒー、午後のコーヒー、夕方に集中力が切れた人がぶらぶら来たとき、などなど。なんでもない会話かもしれませんが、少しずつ仲良くなれる魔法の時間だなと思います。


別に強制ではないので、参加したくなかったら机でぽちぽちPC作業していたらいいし、全ての同僚の部屋を訪れておはよう・バイバイを言わなくてもいいのです。

なんとなく集まって、なんとなく散ずる、この時間がいい感じの距離感と信頼を作る(と思っている)...ときには、その会話の中からコラボレーションやブレイクスルーのアイデアが生まれたりもしますし。


誰とも顔を合わせない日はないし、仲間の異変があればみんなで解決できる、なんともいいラボの雰囲気の秘訣だと感じています。

(もうちょっとみんなのジョークを理解できるようになりたい)


長くなったので、今回はここまで。



(写真)粉末サンプルを秤量する風景

Yukimi Geo Labo Life

研究と暮らし。海外留学、旅、備忘録など、あれこれ。