大学院生の結婚、出産

こんにちは。ゆきみです。地学系の大学院生です。


先週末、久しぶりに日本にいる友達とZoomしました。

向こうは夕飯の時間(18時)、こちらは11時なので、

ちょうどお互いごはんを食べながら話せていい時差だ。


私は結婚出産を迎えるアラサーです。日本で博士号をとることに決めていて、いつかは日本に帰ってきて暮らしの根を張ることを決心していますが、若いうちは海外で勉強してスキルを身につけて日本に持ち帰りたいという願望があります。しかも、その若手で忙しい時期に結婚も出産も重なることがほぼ確定(というか私はもう結婚してるし)。

Zoomした友人は価値観の合致する数少ない大切な友達です。


とはいえ、日本の大学院生の状況の厳しさ...私も友人も痛感しています。

その理由はだいたいこちら。

(1)お金

(2)結婚、出産、子育てにかけるお金とエネルギー

(3)万が一の場合に家族を守れるのかという不安

(4)タイミングと運にも左右される進路に対する不安


友達と話したてで忘れたくない自分用の備忘録としてまとめます。

ではざっくりいきます。


(1)お金

暮らしに直結するもの、お金。

私も友人も大学院の中では恵まれていて、大学からお金をもらうことができるスカラシップのような制度に守られています(その代わり追加で取らないといけない講義やセミナー等のデューティがあり、そのために要する時間と労力のウエイトは重いですが、やっぱりお金はありがたい。切実に感謝しています)。加えて、私たちのスカラシップでは、海外のラボに一時期だけ滞在する&それで単位認定される制度があります。修士課程のときに2週間程度、博士課程のときに3ヶ月から1年の2度あります。資金的援助もあり、1年間に30万円くらいまで。繰越はできますが前倒しはできないというルールでした。


これは、2週間くらいの短期間なら非常に有用です。研究室を見学して、その施設とボス&ラボメンの性格&雰囲気を確認し、帰国して海外研究の計画を極めて具体的に&現実的に練ることが可能になります。場合によってはその経験をもとにプロポーザルも書けます。そうすると、行ったこともないラボへのプロポーザルを書き&そこのボスから留学の承諾を得ることよりとても現実的に計画を進められます。行ったことがあるラボの経験をふまえたプロポーザルを書くので、何ができて何ができないかはよくわかっています。向こうのボスも私のことをよく知っていて承認を出してくれますし、計画を助けてくれます。または、行ってみたラボが合わなかったなら、そのラボ以外のラボへアプローチするという次の1手にも繋がるので、決して無駄にはならないわけです。


しかし、半年以上になると話は変わります。時間に余裕のある修士やD1のころに行くとなると、先進的な研究が行われているアメリカやヨーロッパに行くには相当の自腹をする覚悟が必要です。お金を繰越して貯め、D2とD3で行くとなると、研究の佳境の最も熱意のある時期、博士論文やポスト探しで忙しい大切な時期に日本にいないことになります。もしかしたら1年卒業が伸びることを覚悟して渡航することになるかもしれません。私のように。


学生間では、海外研究留学の単位をとるために卒業を伸ばすことになる点の是非、支援金の金額や前倒しが許されない点に関する議論もあります。私もわからないでもない、いや、むしろわかりすぎるくらい理解できます。が、私はこれでも十分恵まれていると思います(前の大学院なんて何もなかったし、どこに行くにも自腹が当たり前でした)。むしろこんなもん可愛い問題だと思っています。本当に大変なのはポスドクになってから...。


私たちも悩むところですが、海外のほうが日本より研究が進んでいることは珍しいことではないと思います。そこで海外でスキルを身につけていこうという夢を持つわけです。ところが、海外で教授になってやろうまでは思いません。日本が好きですし、一度は挫折した自分が研究の世界に戻る過程で労力とお金をかけて育ててくれた日本のサイエンスのコミュニティに貢献したかったり、これまで好き勝手させてくれた親へ孫の顔を頻繁にみせてあげたり、感謝の気持ちをこめて老後の親孝行をしたかったりするからです。でも...はて、日本の制度で海外に行くべきか、海外でポストを獲得すべきか、まずそこで悩むわけです。


日本の制度で海外での研究を支援してもらえる道はいくつかあります。まず知るのはそれらの制度からである場合が多いと思います。私も憧れていました。でもリアリスティックな目でみたらどうなんでしょう。そのお金、家賃でふっとんだりしませんでしょうか...。行きたい国にもよりますが、どんな生活水準が待っているのかよく考えるべきというのが私の考えです。私の知人がたまたまそうなんであって、これが全体を代表する例だとは思いませんが、知人の話を数人聞くと現実の一端は見えてきます。


海外でポストを得られて、近しい研究テーマで、望むスキルを習得できて、どこまでの成果を自分の原著論文にできるのか。いろいろな人の体験談を聞くほどに、運とタイミングも絡むものだなあと思います。各国のグラントの制度や、ポスドクの求人で求められる条件など、いろいろなものに目を通したり、いろいろな人の話を聞くことで、情報をインプットし続けたいものです...。また、目標の国の税制度や不動産などを調べることもできます。自分からアクセスしないと知らなかった助成金制度もいろいろあるはず。月や年などいろいろなスケールの時間軸の中にTo Doや想定されるイベントを落とし込んでいくのが今は精一杯ですが、いつでもチャンスをつかめるように、情報は常にアンテナを張ってアップデートしておくようにはしています。



(2)結婚、出産、子育てにかけるお金とエネルギー


結婚している場合、家族はどうするのか、子供はどうするのかも問題です。単純に考えても、日本国外の先進国の物価・不動産の金額・医療の金額は恐ろしいほど高い。そこにさらに、家族同伴なら相応の生活費を想定に織り込まねば。残念ながら身の回りには既婚者・子供がいるポスドクが少ないのと、まだ自身で候補の国の育児制度や税金制度まで調べきれてないので、この点の情報は少ないのですが...。もっと情報を集めたいと思います。


私の場合は、すでに結婚はしていてこれから出産があるわけですが、授かり物なので予定どおりに行くとは限らない前提でいかなくては。それでも、何にいくらかかって、どれくらい動けないのか(研究不能なレベルと期間)という想定はしておこうと思います。たとえばとても不安なことの1つがつわりなのですが、私はふだんの生理のときもけっこう我慢できない人で、月の1/3はイライラしたり気がずーんと落ち込んでいたり、吐き気や頭痛があったりしますし、生理のはじめ3日間は出血が多くて動けません...大学を休むこともしばしば。一度、ラボにがんばって行ったものの出血が多くて立てずデスクでPCをのろのろとしかすすめられなかったとき、なぜ今日は実験しないのか理由を聞かれて「すみません立てないので」と言ったとき、ある研究員さんに「じゃ病院に行けば」と言われたことがあって、それ以来こわくて生理だから休んでいる・動けないとは言えなくなってしまいました。

話がずれましたが、そんな耐久性激弱人間なので、つわりになったら動けないんじゃないかな...でもちゃんと言えるかな...とか不安でいっぱいです。私の身の回りは研究の世界にしては女性が多いコミュニティなので、そういうことには認識が広いように見えるかもしれませんが、そうとも限りません。ある研究員さんはぎりぎりまでおなかが大きくなってもラボに来ていて「すごいねー」と言われていたので、そのようなコミュニティの中だとよけいに休みにくい...。また、日本でお世話になっていた婦人科の先生はとても協力的なのですが、海外でもそんな優しい先生が待っているとは思わないでおこうと思います。そして、できれば出産や育児に理解があるボスのラボに行きたいものです...(でもボス選びの段階でそこまで見通せるものじゃないような...)


さらにその先には育児が待っているわけですが、成果を出しながら子育てすることができるだろうか、不安でいっぱいです。お金もエネルギーも...。子供への愛情はいっぱい注いであげたいし、できるだけのことはしてあげたいけど、夫の支えもある環境がいい。けど、夫にキャリアをやめて一緒に来てとは言いにくい。うーん。もし私だけ来るとなったら、子供にしてあげられることはとても限られちゃうけど、子供を連れてくる&夫は日本だったら、ラボに連れて来れるなら連れてきてあげるとか、敷地内に保育所があればそこに入れてなるべく遠くない場所で、研究が終わればすぐ迎えにいってあげるとか、休みの日は博物館に行ったり、自然の中でセルフ自由研究??してあげたりとか、とにかくできるだけ、自分がたおれない範囲でできるだけ、研究も進めながらできるだけ、子供のことを大切にしてあげたいと思います。


とにかく、何を優先して何を諦めるのかを明確にして計画を練り、伴侶との意識・方針のすり合わせをし、周到に準備したいものです。ドイツに来てからの留学も、計画の1.5倍ほどのお金がかかっています。友人の場合、アメリカでの研究留学では計画の2倍かかったそうです。いつか帰国することを前提とした若手期間中の海外でのポスドク、よく考えすぎても無駄なことは1つもないはずです。



(3)万が一の場合に家族を守れるのかという不安

これは...国にもよりますが。まず家族同伴だったら現地の医療レベルと医療費。ちゃんとした医療を受けさせてあげられるのかな...。次に日本に残してきた親族、特に親。万が一のとき、ちゃんと帰国できるだろうか。帰国を許さない制度だったらどうしよう...どうもできない...それとも途中で自分のポストは投げて帰国を決意するんだろうか...。最後に、自分にもしもがあったときは。あれ?いまここ、ノープランかも...。ちゃんと海外PDする前までには、あれこれ可能性を考えて対策して、周りに伝えておくようにしなくては...。


(4)タイミングと運にも左右される進路に対する不安

ポスドクは日本でも海外でも、パーマネントではなく有期雇用であって、どんなボスのどんなプロジェクトに出会えるかには、縁やタイミングや運がとても絡んでくるということは、いろんな人から聞いて知るところです。それが数年単位で移り変わることは、自分にとってはいろいろな人と関わったり、スキルや知識の幅を広げたり深めたり、いつか自分がラボを立ち上げるための経験につながるいいことではあるのですが...。家族を連れていたら、家族のタイミングもどうなるのかなとは思います。たとえば子供の転校や受験もあるでしょうし、私自身は一時期不登校を経験したり(1年以上!!)、大学院もうつ病でやめちゃったり(完全な社会復帰ができるまでに3年)、イレギュラーは体験してきたので、そういうことも我が子にあるかもしれないと思っておこうとは思いますし。子供が揺れ動く時期に長距離の移動、なにか悪いことにならないかなあ。私の考えすぎ、いやむしろいいことになってくれたらいいのですが。



自分の備忘録用なのでずらずら書いてしまいました。

いつか見返そうと思います。

そして、やっぱり友達と話すってとてもいい機会。

時差を超えて話す時間をくれたことに感謝感謝。


大変なことがどんなにあっても、研究も家族も大切にしていきたいと思います!


今回はここまで。





(いらすとやさん、おむつケーキ)ドイツのラボ仲間が、おむつケーキのことを話したらとってもかわいいデコレーションだけどカルチャーショックを受けていました。

Yukimi Geo Labo Life

研究と暮らし。海外留学、旅、備忘録など、あれこれ。